5.17集会 丸山重威さん資料

日本ジャーナリスト会議のホームページ「連載―マスコミ批評」
 (http://www.jcj.gr.jp/masscom.html)より        新聞 (2003.5.13)


「なぜ」が深まる「朝日」社説

政府の言い分を受け売り、民主党案に肩入れ
12日付朝日新聞は、有事法制問題で民主党案を「土台」と書いた4月27日付社説に関連して、「たくさんの『なぜ』がある」とした投書に答え、「独り歩きさせないために」と題する社説を掲載した。

 新聞各社のほとんどが有事法制必要論で、朝日も例外ではないことについては、既に指摘されてきたが、こんな議論を読まされても「なぜ」は深まるばかりである。それにしてもここまで民主党案に肩入れして、有事立法賛成の論陣を張るとは思っていなかっただけに、残念だ。あえてこの社説に異議を差し挟みたい。

 この社説では、有事法制が必要な理由として、「いざというときは自衛隊に動いてもらわなければならず、何の決まりもないままでは政府の勝手次第になります」とし「北朝鮮問題を抱え、最小限の備えさえ必要ないとは考えにくい」とし、「法律を政府や官僚機構の独善を許さない内容とすること」「法制度の透明性を高める」必要性を強調した。

 朝日が上げている理由は、政府の「備えあれば…」論、「北朝鮮の脅威」論であり、「それならなぜ、『備え』がなくてもいままで平和だったのか。いま新たにこれが必要なのはなぜか。北朝鮮が攻めてくる可能性があるのか」という「なぜ」には全く答えていない。
しかしここでは、朝日社説があえて避けている問題を3つだけ指摘しよう。

3つの論点に答えよ−基本的な問題をどうするのか
 第一。朝日は、いま与野党協議で焦点になっている「基本的人権の擁護」について、明記することを求め続けるのかどうか。社説は政府案について「国民保護や自由の確保は後回しにされ国会の監視も利きにくい」と書き、「民主党は安易な妥協が許されません」としている。基本的人権の尊重は日本国憲法の柱であり、平和的生存権そのものである。法案にあるさまざまな私権制限をどう規制するのか。明らかにしなければならない。

 第二の論点。朝日は、この法案と日米関係、特に米国の戦争との関係をどう見るのだろうか。社説は「日本有事が際限なく広がりかねない。民主党案でも問題が残る」「『備え』はアジアの脅威にならないかという心配もあります」とある。朝日はこの「なぜ」については、沈黙したままで、それを防ぐ手だての提案はない。民主党案に不安があれば、それをどうするのか。
 恐らくこれを止めるには、ガイドラインや周辺事態法で変質してしまった「日米安保」を少なくとも以前の解釈に戻さなければならないだろう。そして、「非核三原則」とともに「集団的自衛権の禁止」「専守防衛」「海外派兵の禁止」「防衛費GNP1%枠」「武器輸出の禁止」などを厳しく適用して行くしかないはずだ。しかし、アフガン攻撃、イラク戦争など米国の「一国主義」の中で、朝日は現実をどう考え、どうしようとしているのか。

そして第三。朝日は、憲法をどうしようとするのか。この社説で朝日は「日本は戦争をしない。他の国にもさせない。それが憲法の精神です」と言っている。

 とすれば、この「精神」に乗った「備え」をするのが先決であり、政府自身が「当面はあり得ない」と言っている「攻められたとき」の法制を第一番に作ろうとするなど、本末転倒ではないのか。九条の規定にある「交戦権の否認」や、政府自身の「集団的自衛権の否定」をどう考えるのか。
 
朝日は「言論」を取り戻せ
「反日分子の処刑」と公言するテロリストに記者が殺傷された阪神支局事件をはじめ、一連の朝日新聞攻撃を許してはならない、と決意したジャーナリストたちによるシンポジウムが10日、プレスセンターで開かれた。
 そこで配られた資料には、現論説主幹が政治部長時代に書いた「外交尽くし新法の出番つくるな」と題したガイドライン法成立のときの指摘や、有事3法を閣議決定したときの「『なぜ今』の説明が責務」と題した解説記事が紹介されていた。

 「ガイドライン法」から4年経ったいま、現実は、米国のアフガニスタン攻撃に対応しなければならないとして特別措置法ができ、ずるずるとこの法律の下で自衛隊のインド洋作戦が継続している。イラク戦争が始まると、「世論に従うばかりが正しいとは言えない」と言う小泉首相の下で、世界中の反対にもかかわらず「米国支持」を打ち出し、イラクを攻撃する軍艦にも当然のように給油を続け、事実上「参戦」してしまっている。

 そんな中で、朝日自身が問うた「なぜいま有事法制か」は、すこしでも明らかになったのか。また「有事法制の出番つくるな」と書けば問題は解決すると考えるのか。
「朝日新聞も左右の力関係の中で揺れている」と言ってしまえばそれまでである。集会では「ジャーナリストの覚悟」が語られ、「あきらめないこと」が強調されていた。

 平和憲法を高く掲げ、世界に向かって積極的に発言していく。ますます現実味を増している憲法を評価し、そこから発想していく。−そんな言論を朝日に期待するのは、所詮「無い物ねだり」なのだろうか?
ことは日本の将来に関わることである。朝日の奮起を期待したい。 (M)

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