|
8.戦争と言論統制
世界貿易センタービルへハイジャック機が突入、爆破、炎上、崩壊する衝撃的映像が、繰り返しテレビで放映され、アメリカ国民が星条旗のもとに結集するニュースが興奮するアメリカの姿を写し出した。その後の空爆、特殊部隊の動きなど、報道はアメリカよりの情報がほとんどであった。
アメリカの情報の合間を縫うようにビンラディンの映像がテレビに登場するようになった。洞窟や岩や崖を背景にビンラディンの顔が写し出された。
「パレスチナに平和が戻らない限り、アメリカに平和は訪れない」
「キリスト教徒の十字軍からイスラムを守れ」
「アメリカは、八十年もパレスチナを苦しめた。アメリカの今日の苦しみは、パレスチナの苦しみである」
「同時多発テロは正義の行いだ。米国がサウジアラビアに居座る限り、攻撃はやめない。イスラエル支援とイラクの経済 制裁をやめない限り、アメリカとの戦いは終らない」
「空爆の惨状を世界のイスラム教徒は見過ごすのか。アメリカに敵対すべきだ」「アメリカは広島、長崎、ベトナムで市 民の大量殺戮を行った。アメリカこそテロリストだ」
また、国連事務所、病院の誤爆現場、誤爆で負傷した市民が病院のベッドで家族が殺された状況を語る映像が流された。タリバン、ビンラディンの側にたった情報である。映像の配送はカタールのアルジャジーラである。米政府は、放送の中止を申し入れた。
理由は、映像が扇動的であること、ビンラディンの暗号によるものである恐れがあるというのである。イギリスもこの映像を拒否した。
アルジャジーラは、米政府の申し入れを拒否した。アルジャジーラは、世界に二十六カ所支局があり、たまたまアフガンに支局があり、タリバンに取材ができ放送したに過ぎない。情報は公平に報道している。ワシントンにも支局があるので、米政府の情報があれば、かたよりなく放送すると、米政府の言論統制を突っぱねた。
ブッシュ大統領批判のニュースキャスターが罷免され、反戦高校女子生徒が退学させられたように、戦争は言論統制と統制とは逆の戦争美談がセットで登場する。現在目に触れる米政府の言論統制は、氷山の一角に過ぎない。
9.自衛隊、領海外へ出動命令
10月8日、米軍機はアフガニスタンへの空爆を開始した。この時点での米国空爆支持率は、九四パーセントであった。異常な高支持率は国民にとって危険信号であることを忘れてはならない。
日本が満州事変に突入していく時、国民の支持率は百パーセントに近かった。挙国一致の軍部の扇動にのってしまった結果ではあるが、国民にも大きな責任がある。軍国主義下の軍部の責任が余りにも大きいので、国民の責任が見落としがちである。
テロ特措法が成立して二日後、政府は、「自衛隊派遣、海・空約1000人、物資輸送、補給基本計画案を発表、7日後、11月9日、自衛艦三隻が早々とインド洋へ向けて出撃した。
小泉純一郎に対する90パーセント〜70パーセントの異常な支持率を背景にして「米軍支援戦争法」が成立、自衛艦が岸壁で自衛艦の領海外への出動に反対する市民の声を無視してインド洋に向けて堂々と出撃したのである。
11月9日、自衛艦、くらま、きりさめ、はまなの三隻である。
11月26日、補給艦とわだ(8100トン)、掃海母艦(5650トン)、護衛艦さわぎり(3550トン)、前の三隻を含め六隻の艦隊が米軍支援の名目でインド洋で米軍と共同作戦を展開している。
作戦行動はインド洋のディエゴガルシア島(英領)米軍基地、およびアラビア海までを含む広域を想定した作戦行動である。
11月30日、自衛艦派遣を国会は承認した。
自衛艦隊のインド洋、アラビア海への出撃は、今後の陸・海・空自衛隊の領海外への出撃を更に拡大する可能性を含む重大な出来事ととらえなければならない。
また、国会の事後承認も、今後に大きな問題を残すことになった。戦争に参加する国民にとっての重大事項を、艦隊が出撃した後で諾否を問うなどということは、ナンセンスとしか言いようがない。軍事と政治は別々の分野にある。
いったん矢が放たれれば、問題は政治の分野から軍事の分野に問題が移行すれば元に引き返すことは不可能の場合がほとんどである。そうした史実を承知の上で法案は提出された。野党は政治生命をかけて、反対すべき重大事なのである。 国会議員を見る限り、そうした緊迫感はなかった。何故か?
小泉首相の腹のうち 自衛隊海外派遣を何がなんでもと急いだのには理由がある。
第一に自民党のなかに燻っていた「湾岸戦争症候群」を、小泉首相が「恐れず、ひるまず、ためらわず」断行した。憲法も道理も何者も恐れないと自説を公言した小泉哲学を国民は、常に念頭に置いて小泉内閣の動向に注目すべきだ。金だけ出して…云々と言われっぱなしは、日本外交の低劣さの証拠だ。
第二には、米政府の要請に追従したといえる。日米首脳会談前、9月18日「目に見える参加要請」を米政府は日本にたいし先手をうった。「旗を見せろ」ともいった。
大橋巨泉が「旗を見せろとは、何時、何処で、誰にいわれた」との質問に、小泉首相は「新聞で読んだ」と、とぼけてみせた。「日本の外交は、そんなものなんですか」と、巨泉が苦笑して幕になった。重要審議のお粗末に絶句した。
戦争に直接関係のある「武器弾薬」は、輸送しないが、輸送??????
に拡大された。野党の質問にたいする小泉答弁がふるっている。「物資輸送の時、いちいち武器弾薬が入っているかどうか、調べることができるか」と答弁する方も、それで質問を打ち切る方も何としても情けない。詭弁に篭絡されず「武器弾薬は輸送せず」と明記することが重要なのである。
「核兵器・生物兵器が入っているか調べることができるか」と、居直る可能性を含んだ重大討論だと野党の質問者は、認識不足を露呈した一場面であった。
10.領海外・自衛隊出動の先は?
自衛隊が領海外に出動すれば、もはや自衛隊ではない。自衛の領域を逸脱した以上、日本軍である。
政府自民党と自衛隊幹部は、国民の承知しないところで、自衛隊の地位向上 と国軍の呼称確立の機会をねらっていた。既成事実をつくった以上、「慌てず・ゆっくり・確実に」小泉流手法でいずれは、日本軍復活が行われるであろう。
こうした既成事実を積み重ねる過程で、巡視艇と不審船の銃撃事件が発生、不審船を撃沈した。議論抜きで自衛隊の国軍化、軍事大国化、武力行使の歯止め除去は、小泉内閣によって着々と進められている。
我々は「自衛隊・領海外出動」に対して、憲法違反であるから反対する。それと同時に、小泉内閣が今回の自衛隊の派遣をてこにして、憲法改悪を狙い、日本を軍事大国に更には全体主義の方向へもっていこうとする国民に見えないようにしている策謀に対しても、厳しくチェックして異論を唱えつづける。
11.小泉首相のチェックポイント
1.米国追随型首相である以上、ブッシュ大統領の政治姿勢に着目する必要。
政治家には「戦争肯定派」「戦争慎重派」「戦争否定派」大きく分けると三つに分類できる。ブッシュ大統領は、戦争肯定派である。
同時多発テロ発生と同時に「戦争宣言」を公表し、事件発生17日にして空爆を開始した。世界最強国が最小国を原爆の次に破壊力のある新型爆弾を徹底して投下した。空爆開始を待っていたようにも受け取れるほど迅速な作戦の展開であった。
また、パウエル国務長官はじめ、副大統領、国務副長官、国土安全庁長官は、すべて元軍人で固められている。人事的にも戦争体制が整えられていた。現段階では明確ではないが、いずれ兵器産業・死の商人との関係が明らかになるであろう。
「テロを超えた戦争だ」と宣言、「米につくのか、テロリストの側につくのか」「犯人もそれを援護するものも区別しない」超大国アメリカの思い上がった脅迫的ブッシュ発言である。
「アメリカと共に毅然と戦う」と独断・独善・場当たり公約を公表した小泉首相は、ブッシュ大統領と同じ戦争肯定派と確認して、今後の発言、行動を厳しチェックする必要がある。
2.「戦争」という国家の命運に関わる重大事を即断した背景に高支持率があることを見逃せない。
ブッシュ・小泉発言は、この点共通している。
小泉首相の高支持率は、マスコミを巧妙に操作した結果つくられたものである。演出者は飯島勲・政務秘書官である。米百俵、三方一両損…分かったような分からないような事に対して、マスコミは流行語大賞を与えた。
「感動した」これはわかりやすい。前向きで心を高揚させる素晴らしい言葉だ。マスコミと街行く市民は、諸手をあげて賛同している。しかし、「感動した」は両刃の剣である。知覧の特攻基地で涙を流す小泉首相を、テレビの画面で見た時、生き残りの私の涙とは異質のものを感じた。浜松航空基地で特攻を送り出した体験を持つものは、けっして繰り返してはならない、悔恨の涙だ。
「戦死奨励装置」である靖国神社へ反対を押し退けて参拝した小泉首相を重ね合わせると、彼の感動の中身は「戦争肯定」の危険な感動の要素を含んでいると直感した。感動を扇動にすり替えて、若者を戦場に狩り出してはならない。
インド洋へ、アラビア海へ、パキスタンへ艦隊を派遣した小泉首相が口にした「感動」の使われ方に想像力を働かせた賛同なのか、大きな疑問をもった。
3.小泉・田中コンビほどテレビに登場する政治家はいない。
二人三脚で総裁演説をぶちまくっているときから、二人を批判する報道があると、抗議の電話、FAX、投書が殺到した。テレビはこの頃からおかしくなった。
ジャーナリズムは、権力のチェック機関であるはずである。マスコミがその責任を果たさなくなっているのが現状である。
構造改革の花火を打ち上げているが、道路公団の民営化も、医療改革も弱者切り捨ての内容である。青木建設倒産は、行政改革の成果だという。リストラと失業者の増加は戦後初めての猛威を振るっている。それでも支持率70パーセントと不可解な数字がちらついて、小泉批判の足を引っ張っている。
挙げ句の果てに流行語大賞、××大賞だと小泉を持ち上げている。マスコミの堕落は目に余るものがある。
何年か前、野村夫妻にベストカップル大賞をマスコミが贈ったことがある。マスコミの贈る大賞はこの程度のものと笑ってすませればよいが、こと政治がからむとそうはいかない。
中小企業の倒産、失業者のうなぎ登りの増加、ホームレスや自殺者の急増、更に加えて戦争への場当たり参加のバチあたり政策を、今ここで厳しく批判して軌道修正しないと、日本は暗黒の泥沼に転落してしまう。
4.一番問題なのは、戦争参加の国に改革したこの事実を、いかに阻止するかということである。
「テロ撲滅」この旗印が目に入らぬか方式で、ほどなく「有事立法」が提案されるであろう。そうなると言論の自由が奪われ、集会・デモによる意思表示も禁止になるであろう。
外堀を埋め、内堀を埋め、憲法を改悪して国家主義的傾向を強化し、軍事大国への道をまっしぐらというのが、一番恐ろしい予想図である。
自衛隊の海外派遣に反対し、憲法改悪を阻止する運動を強力に進める必要がある。また、マスコミ操作のなかで巧妙に繰り広げられている政治の動向をチェックすることを怠らないようにしたい。
更には70パーセントという小泉支持者である大衆の言動にも厳しいチェックを怠ってはならないと自戒している。
21世紀、第二年を悔いのない年にしたいものである。
|