「約 束」
篠原 中子さん
夫を亡くし二人の息子を育てた
アメリカと戦争が始まった時
上の息子は22歳 優秀で優しい子だ
間もなく召集 中国の奥地で戦死した
まさかあの子がこんなに早く
下の息子は私を助けて働いてくれた
兄の戦死の後下の息子に召集令状が来た
僕がいないとお母さんはたった一人だ
僕は必ず帰って来る
歩いてでも海を泳いでも帰る
どんな事をしてもお母さんの所へ帰る
だからお母さん元気で待っていて
お母さんは大丈夫 必ず帰ってね
約束だ 約束
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息子の乗った船は魚雷で沈没した
船底にいたあの子は粉々になった
必ず帰ると約束したのに
歩いても泳いでも戻るんじゃなかったの
戦をする前に魚の餌になった
それでも英霊であり神だという
死なねばならなかった可哀想なお前たち
一人になってしまった不幸な私
戻りたかった家は戦災で消えた
息子二人の遺髪と爪を入れた鞄は
あの日ひったくられた
失って失って失っていく
戦争は総てを消し去る
息子二人を記憶しているのは私だけ
靖国ではない
戦争の悲しみは記憶されない
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